訃報を聞いてかなり驚きましたが、いつぞやの激やせした姿を見た時から「もしや」と思っていたのですが、それでも55歳は早すぎです。
しかも、前社長である山内氏が亡くなってから2年も経っていないですし…
今後の任天堂の動向が気になるところですが、任天堂の新ハードNXの陽の目を見ないままこの世を去るなんてあまりにも悲しすぎます。
まるで自身が手掛けたワンダースワンの発売を待たずに交通事故で亡くなられた元任天堂の横井軍平氏を思い出します。
岩田社長はHAL研究所所属時代にプログラマーとしてファミコン初期から数多くの名作を生み出したり、任天堂の社長に就任されてからもニンテンドーダイレクトや社長が訊くを配信するなど、社長の身でありながら自ら自社タイトルの宣伝を大々的にやっていたりと、その活躍ぶりはある程度ゲームに詳しい方ならご存知かと思います。
その数多い岩田作品の中でも思い出深いのはファミコンの『ゴルフ』
初めてプレイしたのは31年ほど前かと思いますが、当時はファミコンなんて持っていなく、幼馴染の家でずっと遊んでいました。
そのファミコンも、その幼馴染のお父さんの所有物ということもあり、彼の家にはこれしかソフトがないという事情もありましたが、二人で遊べることもありずっと遊んでいました。
お互い幼いこともあり、ゴルフのルールなんて理解せずに遊んでましたが(笑)
当時はファミコンそのものが珍しい存在だったので、当然ながら技術的なことは何も考えずに遊んでいたのですが、今思えば凄いゲームですね。
近年のゴルフゲームはやったことがないので比較はできないですが、『ゴルフ』をはじめ、岩田社長が手掛けてきたゴルフゲームに影響されて開発したと言われるSCEの『みんなのGOLF』(開発キャメロット)と基本となる部分が変わらず(2D&3Dの画面表示、ショット時のパワーメーター表示など)、それをファミコンの最初期に発売してしまったのが驚異的です。
しかも、ファミコンの初期は同時期のゲーム機と比べてメモリの少なさから『ドンキーコング』ではアーケード版よりも少ない全3面にされましたが、こちらはなんと18ホールの大ボリューム。低容量ながらもあの作り込みは、同時期の任天堂スポーツゲームと比較しても頭が一つ飛び抜けています。
売り上げ面を見ても『ゴルフ』は246万本と、全ファミコンソフトの中で歴代6位の売り上げを誇り、同じ任天堂スポーツの『ベースボール』と比べて11万本近く売り上げています。何が言いたいかというと、当時の日本のスポーツの王様だった野球に比べ、金持ちの娯楽のように見られたゴルフは一般性が低いスポーツでしたが、ファミコンソフトの売り上げでは逆転しているということです。
しかも、当時のゲーム機は今以上に子供の玩具というイメージも強かったので、この246万本という数は大人だけでなく、子供までも巻き込んだヒット作といえます。
ゴルフを知らない小学生になったばかりの私でも問題なく遊べるよう作られたこの『ゴルフ』は、自分にとって岩田史を語るに欠かせない一本になります。
岩田社長はファミコン初期には他にも『バルーンファイト』『ピンボール』といった傑作も出していますが、思い入れという一点で見れば『ゴルフ』の印象が強いです。
そうそう、ネットニュースやゲハでは「岩田社長はゲーム開発者としては優秀だけど経営者としては無能」とDisっている声をよく聞きますが、私はそうは思えないんですよね。
連続の赤字を繰り返しながらも、リストラを敢行せずに黒字化させたその手腕は他の経営者も見習うべきだと思います。
ゲームを作るのは人です。その人を切って人件費を削ったら開発力が衰えるのは、実際にリストラを敢行したスクウェア・エニックス(タイトー)の現状を見れば一目瞭然です。
しかも、希望退職を募集すれば、実力のある人はそんな落ち目のある会社には見切りをつけて退職金が貰えるうちに退職して、他社へ移籍したり、独立するわけで、リストラを敢行してますます優秀な人材が抜けて余計その会社が詰むのはシャープの現状を見れば一目瞭然です(笑)
岩田社長はプログラマーとして昔から開発現場にいたからこそ人の大切さを知っているわけで、それが数多くの任天堂作品のクオリティの高さに繋がっていると私はそう思います。
たった一回分の記事で岩田社長の偉業を語るのは私の文才では不可能ですが、それは他の方が語ってくれるので、あえて私はファミコンの『ゴルフ』の素晴らしさを語るだけにしておきます。
長くなりましたが、今後ニンテンドーダイレクトで岩田社長の姿を二度と見ることができなくなることに実感が沸きません。お悔やみ申し上げます。