制作サークル:ゆずもデザイン
定価:2,000円
全168ページ
2018年5月20日初版発行(ゲームレジェンド28)
スペハリ30周年本で輝かしいデビューを飾った、ゆずもデザインさんによる初代『ファンタシースター』(セガ)の考察本。
いつもこのブログを読んで下さる方には説明不要だと思うけれども、『ファンタシースター』はセガ初のオリジナルRPGとして1987年末に発売されたマスターシステムタイトルで、当時のRPGとしては珍しいSFの世界観や、大容量の4メガカートリッジを採用することによって当時の水準を超えたビジュアル&サウンドが評価を博し、今でも根強いファンが多い伝説の作品。
そんなレジェンド級のタイトルを扱う作品だけに、ゆずもデザインさんから発表があった時は完成を心待ちするほどの期待度でしたが、最後まで読んでその期待を裏切らない仕上がり!
ゲーム内容の簡単な説明はもちろん、国内版・海外版・移植版の紹介や、
攻略本などの関連書籍やサントラの紹介
ディープなセガファンならばお馴染み(?)の同人誌『DEEP!メガドライブ』の著者であるヴァフィョーン原さんによる出張版記事(一部はDEメガの再録で、当時モノクロだったページがカラー化されている!)
そして個人的に最大の目玉だったのが、シリーズを手掛けたスタッフのロングインタビュー!
正直よくこの面子を揃えたなあ…と思った。もはやプロの仕事ですよ!(スペハリ本の時からそう思ってたけどw)
JUDY TOTOYAさんはメガドライブ版『ソーサリアン』(セガ/日本ファルコム)の挿絵がよかったなあ…とか、IPPOさんは女性だったんだ!という発見もあったけれど(笑)、ファンタシースター以外に関わったゲームについても語っていて、個人的に興味を持ったのが大島さんがキャラデザを担当した『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』(セガ)のBGMにマイケル・ジャクソンの曲を採用する話もあったという話。噂レベルで聞いた話ではあるけど、諸事情で前作の曲を担当したドリカムの中村さんが引き続き担当をすることになったんだそう。それにしてもマイケルの曲をボツれるなんてある意味で贅沢だ(笑)
その他、徳間書店でセガマークIII関連の初期を作っていたMW岩井のインタビュー、ゆずもデザインスタッフやファンタシースターファンによるコラム、SST氏によるリプレイ日記など、いつものゆずもデザインらしい安定した読み応えある内容!
巻末には攻略法も掲載されているけれど、なんと双葉文庫から発売されたゲームブック版のフローチャートまで掲載されている充実ぶり!
…今からゲームブックに興味持ってもレアすぎて手に入らないよおぉぉぉ!
ファンタシースター好きはもちろん、当時を知らなくてもこの本を読めばあの頃の熱気は伝わるし、またマスターシステムと共に格闘してきた当時のユーザーでもこみ上げてくるものがあるはず。
つまり手に入るうちにゲットすることをオススメ。
特に関係者インタビューなんて次があるかどうかわからないですからね。
ちなみにこの自分もこの同人誌にホンの少しだけ関わってたりします…
サムスンから発売された韓国版の貸し出しだけ…
しかもちゃっかり名前まで出してもらっているという…(笑)
たまたま自分が韓国版を持っていることを編集長のPinさんが聞きつけて連絡してきたのですが、よくそんな情報を見つけてきたなあ…と少し驚き。確か20歳の20年前に入手したソフトだったけど、このソフトがこんな素晴らしい本のお役に立てるだなんて、あの時に手に入れてよかったと思った(笑)
本当はコラムも書きたかったんだけれど、マスターシステム当時のことは知らなく、初めて初代をプレイしたのが1994年に発売されたメガドライブの『ファンタシースター復刻版』というニワカぶり(汗)
メガドライブ時代はレトロゲームブームなんてものがないから当然レトロ市場というのがなければネットオークションやネット通販なんてものは姿形さえなく、さらに秋葉原とは違って地元ではマスターシステムソフトを手に入れる手段もなく、メガドライブでの復刻の発表はまさに待望の話でした。この頃はメガドライブで2~4作目をクリアしただけで、プレイしてないのが初代のみ。特に4作目の『ファンタシースター千年紀の終りに』が最高すぎて、どうしてもシリーズ全部やってみたかったんだよな…
復刻されたメガドライブ版はPSG音源オンリーなのでマスターシステム版の売りだったFM音源サウンドが残念ながら聴けなかったけれど、フルサイズの滑らかな3Dダンジョンや戦闘シーンのアニメーションはとても(1994年春当時で)5年以上前のゲームとは思えず、これをリアルタイムで体験できれば優越感があったろうな…と思いながらプレイした記憶。実際に遊んでみて戦闘バランスはあのドラクエII以上に厳しいものだったし、ストーリー展開はあってないものだったけれど、圧倒的なビジュアルで訴えていくパワフルな感じがアーケード出身のセガらしさを実感。
当時圧倒的シェアを誇っていたファミコンでさえも、1987年当時は4メガカートリッジがなかったせいか(せめて2メガ)ここまでビジュアル面に凝ったRPGが少なく、尚更当時遊びたかった…と思ったけど、当時は小学生だった為にハードごとソフトが買えないどころか、クラスメイトにユーザーがいなかったからどうにもならなかったという…(汗)
後にマスターシステム版をゲットして初めてFM音源サウンドを体験し、その衝撃から勢いで一気にクリアしたんだけれども、入手の苦労もあってあの時はめちゃ感動したなあ。繰り返すけれどこれを1987年当時に家庭用で出したセガは恐ろしい…。まさに技術力のセガ!これでバランスがよければ…とは言ってはいけないかな?これはファミコンRPG中心で遊んでいた人間の印象なので、セガオンリーの人には違う印象があるのかも知れないけれど(汗)
4作目の発売の後にプレイしながらも、あの頃はあの頃で熱中はしたけど、マスターシステム版から遊んだ人に比べると情熱あるコラムが書けない…と思って辞退したんだけれど、今だったら復刻版なりのコラムを書けたかなと少し後悔(笑)
同じくこの本を購入した同僚が一通り読んでみて衝撃だったというのが、ファンタシースター関係なく、コモドール64版『アテナ』(SNK)のグラフィック(笑)
日本版のアテナはこちら…
このレベルのローカライズは他にもたくさんあるけれど、こんなグラフィックのアテナでも向こうでは受け入れられたならば、当時のガイジンと日本人との感性の違いを実感。逆にガイジンに日本の80年代の萌え文化(80年代に萌えという言葉がなかったけど)がどう映ったのか気になった(笑)